53.かみなり

 

 

 

 

「おーい。雨がキツくなって来たから、今日の練習はここまで!」

スミレ先生の声に、テニス部一同は急いで、コートを片して、部室に駆け込む。

 

 

「うひー。ずぶ濡れだにゃー。」
菊丸は騒ぎながら、タオルで頭を拭く。
他のメンバーも濡れたジャージを脱ぎながら、口々に菊丸と同じ様な言葉を吐く。
海堂も同じく、なにも言わずにタオルを頭から被り、髪を乾かしながら、ジャージの上を脱ぐ。
ふと、騒がしい部室に何かが足りない気がして、海堂が振り返ると、いつも見える、自分より11センチ背の高い男が居ない。
(まさか、まだ校庭に?)
部室の窓からも判る程に雨足はキツくなっている。大会前だというのに風邪でも引かれたらタブルスパートナーとしては大変困る。
海堂は仕方なく、ロッカーに入れて置いた折り畳みの傘を手に取り、部室の外に出た。

 

傘を差しながらコートに戻ってみたが、人影は見当たらなかった。

(・・・いないか。行き違いで部室に帰ってるかもな。)

そう思い直して、を返すと、背後から微かにボールを打つ音がした。

「!!」

海堂が再び振り向くと、そこには、雨に打たれながら、コートに立つ男がいた。

 

「・・・乾先輩!!」

 

まさかとは思ったのだが、雨に打たれる彼の姿には、鬼気迫るものがあり、海堂は

不安に駆られて、声を上げた。

海堂の言葉に、乾も我に返る。

「・・・あれ?海堂。」

転がったボールを拾い上げて、足早に乾に近付いて、傘の中に招き入れる。

「何やってんすか!大会前だってのに風邪でも引いたらどうするんですか!」

「ゴメン。・・・でも、これだけは今やっておかないと。」

そう言って、乾はまたブツブツ言い出した。

相変わらずマイペースな乾に、海堂は嫉妬に近しい形で、ぶちキレる。

乾がこれだけ剥きになる相手といえば、青学テニス部の中ではただ一人しか考えられない。

 

『青学テニス部、部長。・・・手塚国光。』

 

ひたすら距離とか、角度とかブツブツ言う乾の胸倉を掴んで、無理矢理引っ張っていく。

「いい加減にしろ!この雨じゃ、もうデータ収集どころじゃねえだろ!頭冷やして考えろ。」

ズルズルと乾を引き摺りながら、歩く海堂にも、もう傘は役に立っていなかった。

乾も、海堂に一喝されて、毒気を抜かれたのか、大人しく海堂に従いながら、胸倉を掴む海堂の手に、自分の手を被せて、そっと力を込めて、胸倉から外し、手を握る形にした。

 

「・・・ごめんね。」

 

海堂の耳元でそう呟く乾に、海堂は少し顔を赤らめて、乾と同じ位小さな声でボソボソと答える。

「・・・別に。あんたに風邪引かれたらダブルスパートナーとして困りますから。」

ぶっきらぼうな言葉でも、海堂の優しさを感じ取れる。乾は口の端を緩めてにやける。

「ありがとう。俺は海堂と組めて幸せだな。最高のパートナーだ。」

嬉しそうにそう言う乾に、海堂はまた少し赤くなりながら、溜息を吐いて、乾に悪態を吐く。

「やっぱり風邪引いたんじゃないっすか?」

その言葉に、乾は苦笑しながら、海堂に抱きついた。

 

「!!このっ・・・」

 

 

 

 

『どーん!』

 

 

 

突然の奇行に海堂は怒りを爆発させようとしたが、その前に、天からの怒りが爆発した。

 

「「うわっ!」」

 

二人同時に雷に驚く。

結構近くに落ちたようだ。思わず二人は顔を見合わせて、冷や汗を掻く。

 

「・・・・。早く戻ろうか。」

乾は先程までの甘いムードが一蹴されてしまった事を残念だという顔で海堂を見る。

その表情を見て、乾が少し可愛らしく思えてしまう。そんな事を考える自分も、悔しいが、乾の事がそれだけ大事なんだろう。

傘に隠すように、自分の唇を乾のソレに併せ、海堂は雨の中、真赤な顔をしながら部室へと急いだ。

もちろん、部室に二人でずぶ濡れで戻ってきた事で、レギュラー陣から散々ひやかされ、海堂が更に真っ赤になるのは、また後の話である。

 

 

 

お疲れ様です。すっごくご無沙汰の乾海ですが、如何でしょうか?
作風変わりました?う〜ん、成長はしてないと思うけど、寧ろ変わってない方が嬉しいかも。
でも、甘ーい。って思うのは、やっぱり私が変わったのか・・・。
でもでも、まだ乾海好きですから!だからこうやって書いてるんですよ。
少しでも乾海好きな人に貢献できればと願いながら・・・。本当に、気が向いたらまた覗いてみてください(^^;

 2006.12.03

 

 

 

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