りB

BY.INUKOU YUTSUKA

 

 

海堂が乾に連れ去られてから、金魚掬いはリョーマと桃城の二人で運営しなければならなくなった。まあ、桃城にしてみれば、邪魔な海堂を追い払うこと‑が出来て、愛しのリョーマと二人になれたので、乾先輩に感謝しつつ、彼は上機嫌だった。鼻歌交じりで、金魚の袋に次々と水を入れていく。

「桃先輩、それ水入れ過ぎじゃないんすか?」
リョーマの指摘も聞こえない程、御機嫌らしく、水たっぷりの金魚の袋が増えていった。
そんな桃城を横目に、リョーマは溜息をつく。

ぽかぽかと天候も良く、心地良い。少しうとうとしつつも、リョーマは暫く子供達が楽しそうに金魚を掬うのをただ眺めていた。桃城が仕事の大半を手際良くこなしていってくれるので、何もする事が無く、正直暇だったが、リョーマにはそれ位が丁度良かった。

興味の無い仕草を見せつつも、幼少の頃からアメリカ暮らしだったリョーマにとって、日本で同年代との行事はこれが初めてとなる。隣で楽しそうに微笑んでいる桃城のおかげで見ている自分も楽しく感じることが出来る。これから行事ごとは数多く体験出来るだろうが、今日の事も、そしてこれからも隣に居て自分を幸せな気持ちにしてくれる桃城を、リョーマはずっと忘れないでいたいと、ぼんやり考える。

すると、一人の女の子がリョーマの傍に来て、『ぽい』と『おわん』を手渡して
「あれ、すくって」
と黒い出目金を指差した。思わず受け取ったのはいいが、リョーマは金魚掬いをした事が無く、出目金を掬おうとしたが、ぽいを水に入れて、金魚を追い回しているうちに、ぽいが破けてしまった。

それを見た女の子は、火がついたように、泣き出した。成す術も判らずうろたえるリョーマの元に、何事かと、桃城が駆け寄ってきた。リョーマは、ほっとして、桃城にこれまでの経緯を説明して、助けを求めた。理由を聞いた桃城は、得意げな顔を見せて、新しいぽいと、おわんを取り出して、

「越前、良く見とけよ。こういうのはコツがあるんだよ。」
そう言いながら、桃城は、お目当ての出目金を隅に追いやりながら、いとも簡単に掬い上げた。先程まで泣いていた女の子も、「お兄ちゃんすごい。」と手を叩いて喜んでいる。リョーマも、「凄いッスね。」と感心している。

人間、好きな人に羨望の目で見られて悪い気はしない。桃城は自慢げに胸を反らした。

その拍手に他の子達も集まって来て、次々にあれを掬って、これを掬ってと、小さな人集りが出来た。その結果、周りから注目されつつ、桃城は暫く金魚を掬うことになった。

その人集りの多さに驚いたのは海堂で、こんなに人がいては二人だけでは大変だろうと慌てて人波を掻き分けてみると、忙しそうに金魚を掬っている桃城がいた。それを見た海堂はこめかみに青筋を立てて、自分が二人の心配した事を後悔した。

「こぉっっの、馬鹿桃!てめーが遊んでてどうするんだ!!」

海堂は桃城の胸倉につかみ掛かかった。突然の無体に桃城はカチンときたらしい。海堂の手を払い除けた。
「うるせーな。別に遊んでた訳じゃねーよ。」
そう言いながら、今度は桃城が海堂に掴み掛かった。そうなってしまってからは、取組合いで、再び金魚掬いの屋台は騒がしくなった。

 

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「祭り」第三弾です。2でまとめて出すとか言っときながら、桃リョだけ・・・。というより私が海堂が書きたくてそうなったような気が・・・。だって寂しいんだもん。乾先輩も薫ちゃんも出てこないなんて。4にはもうひとつのカップルを・・・!そう言えば、この回の為に私は禁断の金魚のHPに足を踏み込みました。(゜д゜)          

            (湯塚 犬公)

 

 

 


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